何やらこのところ、北方領土の交渉で動きがある(フリをしている?)みたいですが、ちょっと個人的に思うところがあるので書き留めてみます。
※ここに書いているのはあくまでも個人的な感想です。
政治の絡む話なので気に食わない方も多くいるかもしれません。
でも政治的な主張を強要するつもりも議論するつもりもありませんので、ただおっさんが感想文を書いているものとして聞き流してくださいね。
何なら政治的に譲れない思いを持っている方などは読まないほうがいいです。
目次
北方領土問題とはなんぞや。
北方領土とは、択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島(歯舞諸島)のことで、日本が領有権を主張しているものの、ロシア(旧ソ連)が実効支配を続けている島々のことです。
歯舞群島に関しては多数の小さな島から成っているので実際は4島ではないのですが、領土問題を語るときには全部で1島という扱いを受けることが多いです。
地質学的には歯舞群島と色丹島は根室半島の延長で、国後島と択捉島は千島列島に属するとされています。
これらの島を占領したソ連の権限を引き継ぐロシアと日本の間で帰属を返す返さないで揉めているのが北方領土問題ということになります。
北方領土は筋論としてはどうなるべき?
私は北方領土について人一倍勉強してきたわけでもありませんし、学校の歴史で学んだ程度の知識くらいしか持ち合わせていません。
その限りではありますがどうするのが筋なのかを考えてみます。
北方領土の条約上の帰属(世界大戦前)
日露和親条約で日本領土と確定
千島列島と樺太については日露で昔から揉めていたようです。
そんな中で最初に結ばれた条約は1855年の日露和親条約で、択捉島と得撫(ウルップ)島の間を国境と定めました。
樺太はごちゃごちゃで分けようがなかったらしく、結局混在地とされました。
この時点で択捉島以南は日本領と確定します。
樺太・千島交換条約で千島列島全体が日本領に
1875年には樺太をロシア領とする代わりに千島列島全体を日本領とする樺太・千島交換条約が締結されました。
これにより千島の国境は更に北上し、占守島までが日本領になります。
ポーツマス条約で南樺太を日本領に
その後、日露戦争の講和条約として1905年に結ばれたポーツマス条約で樺太の南半分がロシア領から日本領になりました。
日露間で正式に結ばれた領土絡みの条約はこれが最後ですので、第二次世界大戦までの間はこれがベースになります。
日本敗戦後の北方領土をめぐる各国の動き
この辺はWikiで調べました。間違ってたら教えてください。
1945年2月 ヤルタ会談
1945年4月 ソ連が日ソ中立条約の破棄を通告
1945年8月9日 ソ連対日参戦
1945年8月14日 ポツダム宣言受諾を通告
1945年9月2日 日本が降伏文書調印
1945年9月3日~5日 ソ連軍が歯舞諸島を占領
日ソ中立条約の破棄は規約上更新1年以上前に通告する必要があったため、ソ連参戦時には日ソ中立条約は生きていました。
これを無視して参戦するのは条約違反なので、それによって得た大戦の利益は全て無効であるという主張が成り立ちます。そりゃそうですよね。
1946年1月 GHQ指令で北方領土を含む千島がソ連の行政管轄区域に
マッカーサー何してくれてんの。
1951年 サンフランシスコ講和条約締結。
これにより日本は北海道、本州、九州、四国とその属島以外の主権を放棄させられます。
ちなみにソ連はこれに調印していません。
同年 日本政府は「択捉島、国後島は千島に含まれる」と答弁。
地質学的には間違ってはいないと思います。
実際に他の国も択捉国後の南千島は千島であるという見解です。
これを日本政府は1956年に撤回し、「南千島」という呼称を止めて「北方領土」という単語を普及させます。
まあ冷戦も始まっていましたし、アメリカの思惑で2島返還で決着をつけられなかったのも日本の立場ではしょうがないのかもしれません。
そしてサンフランシスコ講和条約では、「講和条約に批准する連合国以外の国が日本の利益を害することができない」と定めています(元となっているカイロ宣言内で言及されている中国はOK?)。
つまり、批准していないソ連は領土拡張ができず、千島と樺太の領有は正式に認められたものではないということになります。
筋論ではそもそもロシアは部外者では?
歴史を遡って有効そうなものを採用していくと、
- 歯舞・色丹は文句なしで日本領
- 国後・択捉を含む千島列島と南樺太は日本が放棄
- 部外者ロシアは千島と南樺太の領有権を主張する権利すらない
- 暫定的に連合国の管理下に置かれている状態
というのが本筋となるのではないでしょうか。
そうすると、ロシアが行っている千島統治に正当性がないのはもちろんですが、日本政府が掲げている「択捉国後(南千島)は千島に含まれないから日本領である」というのも無理筋のような気がします。
そうなると、筋としては同様に一旦施政権を放棄した沖縄とか小笠原と同様に扱われるのが筋と私は思います。
千島と南樺太は連合国の統治区域として暫定的に扱い、その後の施政権は日本と連合国で取り決めるというやり方が筋論としては正しいのではないでしょうか。
無理ありますかね?
そしてそもそもサンフランシスコ講和条約は批准していない国を原則連合国として扱わないようなので、ロシアが統治している事自体が国際法的に問題があるというところからスタートしなければいけないことになります。
そう考えると現在、歯舞色丹の返還をチラつかせるだけで経済協力の甘い汁を吸おうとしていることに関しては「ふざけんな」という感想しか出てきません。
筋論を言うのであれば、日本としては南樺太と千島列島すべての領有権、施政権の返還を求めて交渉するのが本来で、それもロシアに対してお願いするではなく、連合国に対して求めるべき事案なのではないかと思います。
Wikiで読んだ程度の感想なので「これだけが全て正しいんだ!」と主張しているわけではありませんのでご了承ください。
Wiki自体や私の解釈に間違いがあったら根本から覆されるであろうことも承知しています。
とかやめてください。泣きます。
南樺太と千島を全部返せは非現実的、では現実的な解決は?
ここまで私が知りうる限りの薄い情報で筋論を展開してきましたが、ここまで縺れたものを筋を通せば解決するというわけにはいきません。
まあ筋論自体も解釈一つでブレブレになるわけですが。
正直な話、北海道本土のインフラ整備すら危うい現在の状況で、南樺太と千島列島すべてが返還されたところで今の日本では扱いきれないでしょうし。
択捉までという主張自体は結果なら悪くない。
日本は1956年以降、「択捉以南は第二次大戦まで他国の領土となったことがない」という理由もあって千島から切り離して北方領土として返還を訴え続けてきました。
それはそれで必然なのかもしれませんが、外交は妥協である以上、4島返還だけを主張していたら結果はそれ未満になることが普通です。
事実、日本では現在「もう2島でもゼロよりいいだろ」という論調が増えている中でロシア側は歯舞の返還だけで終わらせようという企みも見え隠れします。
最初から千島と南樺太を主張し続けた上で択捉まで返還されれば御の字というスタンスでやっていればもう少しマシな結果が出ていたかもしれません。
まあ破談が確定していた可能性もありますが…。
いずれにせよ、事ここに至った以上、4島すべて取り戻すのは不可能と言っていいと思います。
プーチン大統領が引き分けと言っている以上、4島返還が1本勝ちだと日本側が思っている限りありえないのですから。
何ならプーチンは2島で1本負けと言い出しているくらいです。メチャクチャですわあの国。
2島返還論に対するいち根室人の思い。
2島返還で決着というのは、ゼロよりはマシという意味では現実的な解決策として有力かもしれません。
実際に歯舞群島と色丹島が返還されれば(もちろん主権と漁業権がきっちり日本に帰属すればですが)、私の故郷である根室市は経済的にはある程度の恩恵を受けることができます。
おそらく現実的には2島返還で万々歳と考えている漁師の方も多数いると思います。
そして何より、今現在での日本が得られる最大の利益はこの2島返還が限界ではないかという雰囲気が日本中に蔓延しているように感じます。
ただ、北方領土自体には利権も何も持たない根室出身者として2島返還では妥結させたくない理由が一つあります。
国後島周辺の地図をご覧いただくとわかりますが、国後島の西側は知床半島と根室半島に食い込む形で存在しているという点です。
私の偏見ですが、ロシアの国境警備隊はただの野蛮な連中でしかありません。
実際に漁船のクルーを撃ち殺したりもしています。
彼らの活動範囲が北海道に食い込んでいる状態で国境を確定させたくないというのが率直な思いです。
もちろんロシア側としてはオホーツク海から米軍を締め出すために国後水道をアメリカの影響下にある日本に渡したくないというのは理解できますが、日本だって経済水域近くでロシア軍にウロウロされたくないんです。
ですので、個人的な意見としては2島返還で最終決着してしまい、それを大業な成果であるかのように喧伝されることには大反対です。
ましてや「引き渡しても主権はロシア」とか飲んでしまったとしたらもう正気の沙汰とは思えません。
良くも悪くも根室は漁師の町ですので、いずれは根室に骨を埋めたいと思っている身としては、できれば海域の安全が保証された町になってほしい願望があります。
個人的には3島返還、最悪2.9島が最低ライン
上記の理由から、最終的に確定するなら3島返還が個人的な最低ラインです。
国後島の東端だけをロシア領として国後水道を明け渡すのであればその部分に関しては継続協議してほしいというのが私の願望です。
もちろん日本領の間には緩衝地帯を設けてほしいですが。
面積等分の案に関しては正直、「ロシアと地上で長めの国境を持ちたくない」と思っていますのであまり良案とは思えません。
ロシアと地上で行き来できるのはイヤです。
いずれにしても2島(またはそれ以下)で国境確定させるような安易な妥結は止めてほしいと思っています。
このように3島でいいやみたいなことを言うと、必ず
と叫ぶ人が出てきます。
感情的には理解できますが、元島民の気持ちで言ったら占守島や樺太に住んでいた日本人だっていたわけです。
そこの気持ちはもう一旦敗戦時に切り捨てられてしまったわけですから、南千島に限って再度取り上げるというのはちょっとフェアじゃない気がします。
領土問題は情に訴えても解決を見ないということです。
元島民の気持ちを返還論の根拠にしてしまったら、それこそ南樺太と全千島返還を唱え続けなければいけなくなります。
さらにロシア側住民の情まで絡んだらもうシッチャカメッチャカですよ。
その辺はもう補償と墓参りなどの手順を潤滑化するなどソフト面の整備をきちんとすることで対応するしかないと思います。
そもそも国境確定を不利な状態で急ぐメリットはない。
そもそもなぜ日本がこんな下手に出て負けに等しい2島-αでの国境確定を急ぐのか理解に苦しみます。
しかも日本にメリットのない経済協力のために莫大なお金を払ってまでです。
この先はどうかわかりませんが、今経済的に困っているのはロシアの方ですし、こんな状態で確定を急ぐメリットなんてないと思うんですがどうなんでしょう?
正直、任期中に何らかの成果をあげたいだけと勘繰られてもおかしくないような焦り方に見えてしまいます。
素人目にもそう見えるんですから手練れのロシア側に見透かされているに決まってます。
そんな中で交渉を有利に運ぶのなんて無理でしょう。
経済協力のカードなんて向こうがもう少し困ってすり寄ってくるまで引っ込めて持っとけばいいんですよ。
この調子ではロシアの食い逃げが見事に成功する未来しか見えません。
順番で言ったら、
2島日本主権確認→平和条約→2島引き渡し→残り2島の返還成果に応じて経済協力実行
くらいの強気に出てもいいと思います。
結局ロシア側からすれば経済協力を取り逃がすことが一番痛いわけですから。
それで領土問題が凍結してしまったらまた待つだけの話なんです。
これまで70年にわたって北方領土なしでなんとかやりくりしてきたわけですからこれから20年伸びたってしょうがないと思うしかありません。
ロシアを善人扱いして食い逃げなんてされた日には世界の笑い者です。
善人扱いするフリは重要だと思いますが。
いずれにせよ、ロシアが困窮したときのためにとりあえず4島の交渉の余地を自ら狭めることは得策とは思えない、というのが私の見解です。
領土問題を先延ばししたいわけではないですよ、念の為。
個人的にはこの件を不利なまま急ぐ意味はないという意見ですが、領土問題を解決してしまうと食いっぱぐれてしまうような人たちと同じような意見になってしまうのは正直本意ではありません。
私も根室で育った身として、北方領土問題は1日でも早い解決を望んでいます。
明日にでも4島返還されるならそのほうがいいです。
領土問題自体で食べている人には申し訳ないですが、そういった人たちの飯のタネより根室沖の安寧のほうが何倍も大事ですのでその辺はご理解ください。
長々と書いてきましたが、私の言いたいことは結局、
せめて国後は返せ!
くらいのことです。
以上が北方領土に関してしがらみや利害関係を持たない、根室出身のおっさんとしてのごくごく個人的な意見です。
もちろん違った意見を持つ個人もたくさんいますよ。
できれば興味ない人にもいろいろ意見は持ってほしいですね。
ではまた!